2021年10月15日
コラム
【循環器コラム】やっぱり怖い狭心症・心筋梗塞 (2021.10.15更新)
これから数回に分けて虚血性心疾患について説明してまいります。
まず虚血性心疾患を理解していただくために‘‘心臓の仕組み・働き‘‘ ‘‘動脈硬化について‘‘簡単にご説明します。
心臓の仕組み・働き
心臓は握りこぶし大の筋肉でできたポンプ作用で全身に血液を送る臓器です。
そして冠動脈はポンプである心筋に燃料(血液)を供給する配送管になります。心臓は1分間で50-90回 1日では10万回 一生では約30億回拍動し続けます。心筋は体重の0.5%しかないのに体全体の酸素消費量の10%を占めています。運動時に酸素需要増加したときに冠動脈からの血液供給を増産して対応します。
動脈硬化と狭心症
狭心症とは、冠動脈の動脈硬化が進展し、内腔がせまくなり(狭窄)、運動時の増産が不可能になり、心筋での酸素需給バランスの崩れが起き、心筋が酸欠状態に(虚血)なったときにおこります。
冠動脈の動脈硬化とは、動脈の壁にキズが付き、悪玉コレステロールが侵入することでプラーク(粥腫)が形成されることを表します。
狭心症の症状としてはいろいろあり、人によってまちまちですが、胸の痛み 圧迫感 絞扼感 奥歯や顎の痛み 肩こり 背中の痛み 胃の痛みなどあります。持続時間は長くても20分ぐらいと考えます。
急性心筋梗塞(AMI)
急性心筋梗塞(AMI)は冠動脈が血栓で急に詰まることにより兵糧攻めに遭い心筋が壊死してしまうことによっておこる病気です。冠状動脈は3本あります。右冠動脈、左冠動脈前下行枝、回旋枝です。症状は個人差はありますが、20分以上続く胸の痛み、冷や汗、吐き気、息切れ、呼吸困難、意識消失などです。図の矢印の部分が心筋梗塞になり壊死になった心筋です。
前回ご説明した狭心症と心筋梗塞の違いを上記に図示します。
狭心症は一時的な酸素不足であり可逆的ですが、心筋梗塞は完全に血管が詰まって心筋が死んでしまう不可逆的な変化であることが大きな違いです。この二つの病態を総称して虚血性心疾患とよびます。
虚血性心疾患の死亡率は日本はアメリカの5分の1と言われて来ましたが、近年増加傾向にあります。虚血性心疾患を予防するには、冠動脈を舞台とした動脈硬化を進行させない対策が必要になります。
狭心症・心筋梗塞を予防するには!!
狭心症・心筋梗塞の主な原因は冠動脈を舞台とした動脈硬化です。
動脈硬化を進行させない対策が必要になります。
動脈硬化の危険因子
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
- 慢性腎臓病
- 虚血性心疾患の既往・家族歴
- 喫煙
- 高齢
- 性別
- 脳や足の動脈にも病気がある
特に赤字の疾患・生活習慣は重要です。
具体的な危険性は?
1)37歳、男性、喫煙なし、糖尿病なし、血圧・コレステロール正常
虚血性心疾患で10年以内に死亡する確率 0.04%
2)50歳、男性、喫煙吸う、糖尿病なし、血圧高め コレステロールは正常上限
虚血性心疾患で10年以内に死亡する確率 0.44% 同じ年齢層でリスクのない方の 3.5倍
3)70歳、男性、喫煙吸う、糖尿病あり、血圧高い、コレステロールも高い
虚血性心疾患で10年以内に死亡する確率 19.78% 同じ年齢層でリスクのない方の 20倍
動脈硬化の危険因子で注意すべきポイント
1)減量 2)バランスの良い食事 3)減塩 4)節酒 5)運動 6)禁煙の6つが重要です。
1)減量
太り過ぎに注意 BMI(体格指数)=体重kg÷(身長m)2
身長が160cmと想定すると…
・BMI 22 (標準体重)=56kg
・BMI 25(肥満)=64kgになります。
しかし断食・ダイエットなどはリバウンド必至ですので、適切な減量ペース(3~6か月で体重あるいは腹囲を5%減)で目指しましょう。
2)バランスの良い食事 カロリーオーバーに注意
適正なカロリーは以下のようになります。
男性 | 女性 | |
50歳~69歳 | 2450kcal | 1900kcal |
70歳以上 | 2200kcal | 1750kcal |
- 主食(ごはん パン 麺)、副菜(野菜 キノコ いも 海鮮料理)、主菜(肉・魚・卵・大豆料理など)をバランスに注意して摂取していただくことが大事になります。
- タンパク質は良質・適量を心掛けましょう。脂身の少ないお肉(赤みの牛・豚、鳥は皮なし)お魚・大豆製品などからとりましょう。
- 脂肪は種類を選び動物性脂肪(常温で固体)は避けましょう。植物性脂肪(キャノーラ油・オリーブ油)の方が良く、青魚は良い油を含んでいます。卵黄、たらこ、いくらなどのコレステロールにも注意が必要です。
- 野菜・食物繊維は積極的に摂取してください。一日に野菜は350g(緑黄色野菜120g)を目安とし、食物繊維は野菜・玄米・海藻・きのこ・果物等から取りましょう。
次回は減塩から説明してまいります。
文責 副院長 相良 耕一