2021年08月11日
コラム
【内科コラム】 熱中症に注意しましょう!
7月に入り、暑い日も増えて来ました。例年、熱中症が増加する時期でもあります。さらに今年は新型コロナ対策でマスクの着用もあり、より一層の注意が必要です。また、熱や体調不良と言われると、新型コロナ感染症の症状とも重複します。医療機関でも新型コロナウイルス感染症を念頭に、一般診療とは隔離して診察をしたり、相応の準備と対応が必要になります。
世の中でも盛んに警鐘がならされています。是非この機会に熱中症について理解し備えましょう。
熱中症とは?
熱中症とは、体温調節機能の乱れや、体内の水分が失われることで、体内に熱がこもってしまい起こる種々の体調不良のことです。従来からら熱痙攣、熱疲労、熱射病、熱失神などと呼ばれ認知されていましたが、最近ではこれらをまとめて「熱中症」として捉えています。
熱中症のメカニズム
熱放散と気化熱システムの破綻から来る体温の上昇
仕事や運動など、体を動かすと体内で熱が発生し、体温が上昇します。また、暑い環境下に長時間いても体温が上昇します。
通常、我々の体は体温の上昇を感知すると、体の表面の血流量を増やして体表から空気中に熱を逃がしたり(熱放散)、汗をかいたり(気化熱)することで体温を下げて一定(36℃台)に保っています。しかし、気温や湿度が高い環境では、熱をうまく外に逃がすことができなくなり、汗をかいて気化熱で体温を下げようとし、体の水分や塩分が減っていきます。
汗の原料は血液です。汗が塩辛い水であることからわかるように、血液中の主に水分と塩分から作られ分泌されます。よって、汗をかくと体内の血流量が減少し、血流量が減ると体の表面から空気中に熱を逃しにくくなります。するとさらに汗をかくことなり、さらに血液量が減少し、いずれは汗もかけなくなります。こうしていよいよ体温を下げられなくなると、一気に体の中に熱がたまり体温が上昇します。
脳を含む重要な臓器は、37℃以下で一番うまく働き、体温が高くなると機能しにくくなります。また、汗をかいて血液量が減少すると、筋肉や脳、肝臓や腎臓などに十分に血液がいきわたらないため、筋肉がこむら返りを起こしたり、意識を失ったり、肝臓や腎臓の機能が低下したりします。こうして体の調子が悪くなって、熱中症が引き起こされるのです。
熱中症の症状
こうしたメカニズムから起こる熱中症では、上記のごとく種々の症状を引き起こします。
従来、「どんな症状が主か」という観点から熱痙攣、熱疲労、熱射病、熱失神などと言われてきました。しかし、現在ではこのように症状別にとらえるというより、「熱中症」という症候群として一連のものと捉えるようになっています。
これらの諸症状はどのような対処をしたか、どのタイミングでしたか、またどのような人に発症したか(個々人の状況)により刻々と変化します。よって、症状別に分類し分けて考えるより、広く「熱中症」として捉え、重症度別に考えて対応するほうが妥当だと考えられるからです。
熱中症の重症度
日本救急医学会では、大きく3つのカテゴリーに分けて軽症、中等症、重症と分類しています。
重症度の判定(日本救急医学会熱中症分類)
(図)日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2015をもとに作図
熱中症の諸症状は、対処の内容やタイミングや個々人の状態で刻々と変化していくので、早期に異常を察知し、症状を過小評価することなく早期に対処するのが重症化の予防の観点から望ましいと言えます。
熱中症に注意すべき人は?
熱中症といえば、炎天下で長時間仕事をした、真夏の暑いなかスポーツをしていた…といったケースが想起されます。しかし、実際はこうした典型的な場面ばかりではありません。実は、梅雨の合間に突然気温が上がったなど、身体が暑さになれていない時期にかかりやすい病気でもあります。また、たとえ気温が低い日でも湿度が高いと熱中症にかかりやすくなります。家の中でじっとしていても室温や湿度の高さから熱中症にかかることもあり、救急要請時の発生場所では、住宅等居住施設が全体の37%を占め最も多く、次いで道路・交通施設が25%を占めるという報告もあります。最近ではこの様な室内型熱中症が注目されています。
中でも高齢者は、熱中症を起こしやすいと言われます。年をとると体内の水分量が少なくなることに加え、高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくくなるからです。さらに、種々の合併症により心機能や腎機能が低下している方も多く、熱中症になった時の重症化しやすいという傾向もあります。
このほか、運動に慣れていない運動部の一年生、肥満の人、寝不足や疲れなどで体調が悪いとき、二日酔いや下痢などで体内の水分が減っているときも、熱中症が起こりやすくなります。ちなみに、肥満の人に起こりやすいのは、皮下脂肪が多いと体内の熱が外に逃れにくくなるからです。
熱中症の治療
治療の主眼は、上昇した体温を下げることと、汗で失われた水分と塩分を補うことです。
涼しい環境に体を置くこと、直接体を冷やすことも有効です。そして、失われた汗の補充としては水分だけでなく、塩分も適切に補うことが必要です。水分を補うのは当然ですが、塩分を含まない水分だけを補充すると、体の塩分濃度が下がります(薄くなる)。そうすると体は塩分濃度を適正に保とう(上げよう)とし、水分を尿として捨て(利尿)ようとし、脱水が改善しません。さらには喉の渇きも感じにくくなってしまうことがあります。適正な水分と塩分を補充するには経口補水液が最も理想的です。通常の水分・塩分補給ならスポーツドリンクで十分かと思われますが、経口補水液に比べると塩分が少なく、糖分が多いことには注意が必要です。
こんなときには医療機関に!
熱中症を疑う症状があり、意識がない、または呼びかけに対する返事がおかしい場合は、すぐに救急車を呼びましょう。意識がある場合は、前述の応急処置を行います。 ただし、水分を自力で摂れない場合は、医療機関へ。 また、水分を自分で摂れ、必要な応急処置を行ったものの、症状が改善しない場合も、医療機関に行きましょう。
当院でも熱中症の診断・治療を行っています。但し、症状が熱と体調不良を伴うことから、新型コロナ感染症との鑑別が問題となるため、発熱外来として対応しています。来院前に一度ご連絡をお願いします。
文責 院長 八辻 賢