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2021年06月14日

コラム

【消化器コラム】 腹痛 気になる方へ!

腹痛とは、読んで字のごとく、腹部に痛みを感じることです。
腹痛の大半は腹部の臓器が原因でありますが、心筋梗塞などのように腹部疾患以外でも腹痛と感じることがあるので注意が必要です。
また、自分で痛いと感じている場所と実際に問題を起こしている臓器は必ずしも一致しません。「胃が痛い」と感じてる方は外来に多くいらっしゃいますが、胃以外に原因があることも珍しくありません。
腹痛の原因となりえる疾患は、軽症で様子を見ているうちに治ってしまうものから、命に係わる重大なものまで、非常に多岐にわたります。

腹痛の種類

腹痛は従来から内臓痛、体性痛、関連痛の3つに分類され説明されます。

内臓痛

内臓痛とは、「局在がはっきりしない周期的な鈍痛や灼熱感」として訴えられる痛みです。胃や腸などの管腔臓器の急激な拡張、痙攣性収縮などが原因になるとされます。障害された臓器を支配する神経は自律神経と走行をともにするため、刺激を受け、しばしば自律神経症状(悪心・嘔吐、発汗、頻脈など)を伴います。

体性痛

体性痛とは、「持続的で鋭く、限局した痛み」として感じられる痛みです。
炎症などにより、物理的化学的に知覚神経(痛みを感じる神経)を刺激することで発生する痛みで、体性知覚神経(皮膚にある感覚神経)と同じ神経であることから、皮膚で感じられる痛みと同じような種類の痛みといわれています。

関連痛

関連痛とは、病変がある場所からくる神経の近くを通る神経が興奮することで、別の場所が痛いと認識してしまうものです。つまり、自分で痛いと感じる場所とは別の場所に原因がある場合があるということです。
例えば心筋梗塞の時に胸痛ではなく、心窩部痛として感じることがあります。また、虫垂炎の時、本当に炎症を起こしているのは右の下腹部ですが、初期には心窩部(みぞおち)が痛いと感じる方が多く見られます。これも右下腹部と心窩部の痛みを伝える神経が近くを通っているために間違った位置に痛みを感じる関連痛と考えられます。

腹痛の原因となる疾患

よく遭遇する疾患としては、胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、腸炎、胆嚢炎、胆石、尿路結石、急性膵炎、癌、腸閉塞、消化管穿孔、子宮外妊娠、卵巣軸捻転、虫垂炎、心筋梗塞などがあげられます。
臓器別に考えると、消化器系(胃や腸などの管腔臓器(管状の臓器)、肝臓・すい臓・脾臓などの実質臓器(塊状で中が詰まっている臓器)、その他腹膜や横隔膜など)、泌尿器系(腎臓や膀胱、尿管など)、婦人科系(卵巣や子宮、妊娠に伴うもの)などの腹部にある臓器のほか、肺や心臓など胸部にある臓器や血管系の問題で腹痛を感じることもあります。
また、原因別に考えると、感染症や悪性腫瘍(がん)、結石や血管系の病気などに分けることもできます。

これら、多岐にわたる疾患の中から原因を探していくわけですが、最も参考になるのは触診です。押して痛みを感じる圧痛の存在は、自分で痛みを感じる自発痛よりも病変の局在診断を考えるうえで非常に有用です。また反跳痛(押したときより話した時が痛い)や筋性防御(腹筋が炎症のため板のように固くなる)などの所見があれば、重症度の判断にも役立ちます。

まず、腹部を9つの場所に分け、視診、聴診、打診、触診などを行い痛みの強さと局在を調べます。例えば心窩部(上腹部の真ん中 ①)に圧痛がある場合は、胃・十二指腸の疾患(潰瘍や癌など)や膵臓疾患(膵炎や癌など)を疑い、右季肋部(上腹部の右側 ②)に圧痛があれば、胆石、胆嚢炎などを疑います。また、下腹部(⑦~⑨)であれば、腸疾患に加えて、泌尿器疾患、婦人科疾患が鑑別に挙がります。疾患によっては圧痛点といい、特に強い圧痛を訴えるポイントがあることが知られています。虫垂炎の時のMcBurney圧痛点やLanz圧痛点は非常に有名です。
さらに、発症の時の状況、痛みの強さと性質、随伴症状、食事や排便との関連、月経の異常、服薬歴、既往歴などからある程度疾患が絞られます。

想定するべき疾患を念頭に採血やCTなどの画像検査、さらには内視鏡などの諸検査を組み合わせて診断をつけ、必要な治療に結び付けていきます。

腹痛には、我慢していると治るようなものから緊急で手術が必要なものまでさまざまな痛みがあります。臓器も重症度もさまざまであることから激しい腹痛や持続する腹痛、発熱や下血などほかの随伴症状を伴う場合は早急に検査を受けられることをお勧めします。

心配な症状があればぜひご相談ください。

文責 院長 八辻 賢

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