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2020年11月23日

コラム

【消化器コラム】 NASH・NAFLD (非アルコール性脂肪肝)

肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように、かなり病状が進行するまで症状が出にくい臓器です。気づいたときには肝硬変や肝癌を発症していることも少なくありません。そうした中で健康診断は早期発見に大きく寄与していますが、その健康診断で異常が指摘される頻度が高いのも肝障害です。近年の肝障害増加の原因の一つが脂肪肝の増加にあると考えられています。

 

 

フォアグラ・脂肪肝

脂肪肝と言えば、フォアグラです。フォアグラのフォア(foie)は肝臓、グラ(gras)は脂の多いことを意味し、つまりは脂肪肝を意味しています。フォアグラはキャビア、トリュフと並ぶ世界三大珍味とされていますが、人間で脂肪肝と言えば、れっきとした病気です。

脂肪肝は主にアルコールによるものと、肥満などによるものがあることが知られています。従来からアルコールによる脂肪肝は進行すると肝硬変や肝癌を発症することが知られ、積極的に治療されていた一方、肥満等による脂肪肝はただ脂肪がついただけで肝臓が悪くなることはないと言われていました。しかし、一部に進行性で肝硬変や肝癌の発生母地となる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcohoilc steatohepatitis ; NASH)と呼ばれる病態があることがわかり注目されています。

 

NAFLDとNASH

非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease; NAFLD)は、画像検査などで脂肪肝が認められ、かつ、アルコール性肝障害を始めその他の肝障害の原因がない病態である、と定義されています。エタノール換算で男性30g/日、女性20g/日以上の飲酒量でアルコール性肝障害を発生しうるので、それ未満の飲酒量であることが必要です。NALFDの多くは、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などを基盤として発症することから、メタボリックシンドロームの肝病変と捉えられています。NAFLDは病態が殆ど進行しないと考えられる非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver : NAFL)と進行性で肝硬変や肝癌の発症に繋がる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis : NASH)に分類されます。現時点では、NAFLとNASHの鑑別は肝生検(肝臓の組織を採取すること)を行い、病理学的に鑑別するしかありません。

 

NAFLDの有病率

NAFLDの有病率(全人口中のNAFLD患者数の割合)は、欧米で20~40%、日本では9~30%と報告されています。国や地域、報告年によりばらつきが大きく見られますが、2012年の日本における大規模調査では29.7%と報告されています。また、日本においては男性は中年層、女性は高齢者に多いとされています。

NASHの有病率については、肝生検が診断に必須のこともあり、正確な把握は困難ですが、約3~5%程度と推定されています。

 

肥満人口の増加や平均BMIの増加に伴い、メタボリックシンドローム(高血圧、脂質異常症、糖尿病など)患者が増え、NAFLD有病率も日本を含め世界的に増加傾向にあります。日本の研究でも、NAFLD有病率は1994年に12.9%だったものが、2000年には34.7%に増加したとの報告もあります。NAFLD有病率の増加に伴い、当然NASHの有病率も増加していると推定されています。

慢性肝疾患及び肝硬変におけるNAFLD・NASHの有病率

慢性肝疾患におけるNAFLD・NASHの罹患率(慢性肝疾患患者の中でNAFLD・NASH患者数が閉める割合)は、欧米では49%と報告されていますが、日本ではウイルス性肝炎(B型肝炎、C型肝炎)患者が多いことから欧米より低いと言われています。

一方、日本の肝硬変患者におけるNASH肝硬変患者の割合については、全国58施設からの報告があります。その報告によれば肝硬変患者33379例の中でNASHが原因であったのは647例(2.1%)でした。しかし、C型肝炎が治療により治る時代が来たことから、日本においても今後はウイルス性肝炎が減少することが予想され、かわってNASHによる肝硬変が増えると予想されています。

 

NAFLD・NASHの病因

NAFLD発症の最も重要な原因は肥満であり、特に内臓脂肪の量と肝細胞内の脂肪量に正の相関があると報告されています。主な背景疾患としてはメタボリックシンドローム(高血圧、脂質異常症、糖尿病等)があり、中でも糖尿病はNAFLD発症との関連が強いことが知られています。他にも各種ホルモン異常、睡眠時無呼吸症候群、薬剤(アミオダロン、メトトレキサート、タモキシフェン、ステロイド)などが原因になることも報告されています。

 

病態が進行しないNAFLと、進行するNASHを分ける決定的因子は明らかになっていませんが、NAFL(肝細胞の脂肪化)に何らかのストレス(酸化ストレス、ミトコンドリアの機能異常、腸内細菌叢の変化に伴う免疫系の不活化など)が加わると炎症を起こし、NASHを発症すると考えられています(2 hit theory:1st hitが肝細胞の脂肪化、2nd hitが何らかのストレスによる肝細胞の炎症)。最近では炎症が脂肪化と同時か、更には先行する場合もあるとする説(multiple parallel hit)も提唱されています。

NASH患者の予後

NAFLDはメタボリックシンドロームの肝病変と言われるように、NAFLD患者では高血圧・脂質異常症・糖尿病などの合併も多くみられます。従来こうした疾患は動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を発症することが多く、だから治療が大切だと言われてきました。NASH患者でも肝臓病を発症しても、結局亡くなるのは心臓病や脳血管障害ではないかと考えられてきましたが、肝硬変、肝癌を発症するようになると肝臓の病気で亡くなる方も多く、進行した病態ではC型肝炎と予後は変わらないことが明らかになっています。

 

NAFLD・NASHにおいては、早期に積極的に治療を行い、肝硬変・肝癌を発症しないようにすることがとても重要です。

 

NAFLD・NASHの治療

NASHは、NAFL(肝臓の脂肪化)に何らかのストレスが加わり炎症を起こすことが病因と考えられています。このストレスを抑制することが重要ですが、様々な因子が考えられ個人差も大きいことからそれを完全に抑えることは困難です。よって、肝臓の脂肪化を治療するのが確実であり、食事・運動療法による体重減少(肥満の解消)がもっとも安全で確実な方法です。

日本肝臓学会のガイドラインでもまず、食事・運動療法による減量が推奨されており、7%の体重減少を目標として掲げています。しかし、実際に体重を落とすこと、またそれを維持することはなかなか困難であることも事実です。

そうした場合には合併する基礎疾患の治療薬の中に、NASHの治療に有効な薬剤があることが報告されており、個々の状況を見ながら投薬治療を行っていきます。

NAFLD・NASHについては、個人差も大きく、要因も様々であることからなかなか画一化した治療が難しい面もあります。まずは受診し、ご相談ください。

 

文責 院長 八辻 賢

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