お知らせ

2020年11月06日

コラム

【消化器コラム】 逆流性食道炎(胸焼け・呑酸)

逆流性食道炎

みぞおちが焼けるようなジリジリする感じやしみる感じ(胸焼け)や酸っぱい液体が上がってくる感じ(呑酸)、ゲップが多い等の症状を感じていませんか?その原因は逆流性食道炎かも知れません。

 

逆流性食道炎とは?

逆流性食道炎とは、主に胃の中の強い酸が食道へ逆流することにより、食道の粘膜がただれ(食道炎)たり、胸焼け、呑酸などの症状を来す疾患です。そのほかにも、症状は非常に多岐にわたり、酸の刺激による喉の痛み・違和感、慢性咳や声のかすれ等の原因になることもあることが知られています。従来日本人には少ないと言われて来ましたが、食生活の変化やピロリ感染率の低下から近年では増加傾向にあります。命に関わる様な病気ではありませんが、食事が十分に楽しめない、ぐっすり眠れない、仕事に集中できない等の諸症状から日常生活の質(QOL)が低下することが指摘されています。よりよい生活を保つためにも、早く正しい診断を受け、適切な治療を始めることが大切です。

 

診断方法

主に自覚症状と上部消化管内視鏡所見で診断をします。

自覚症状があり、内視鏡で食道粘膜のただれを認めれば間違いなく逆流性食道炎と診断されますが、両者が揃わないこともあり、全て纏めて胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease: GERD)と診断されます。

胃食道逆流症(GERD)は、食道粘膜のただれ(内視鏡所見)の有無、自覚症状の有無から主に3つのタイプにぷん類されます。

 

    • 食道炎(食道粘膜のただれ)がなく自覚症状のみがあるタイプ(非びらん性胃食道逆流症:Non-Erosive Reflux Disease;NERD)

びらん性食道炎

    • 食道炎があり、なおかつ自覚症状があるタイプ
    • 自覚症状はなく、食道炎のみがあるタイプの3種類に分けられます

(食道粘膜にただれが存在するタイプを「逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)」といいます)。
非びらん性食道炎

 

 

診断に内視鏡検査は必ずしも必要ありませんが、消化性潰瘍や胃がんなどの他の病気ではないことを確認するためにも、なるべく検査を受けることが望ましいです。検査を受けずに薬をもらって治療しても症状が完全によくならないときは、他の病気である可能性があるため、必ず内視鏡検査を受けるようにしてください。

 

当院では消化器内視鏡学会専門医による内視鏡検査を行っております。どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

治療方法

主に生活指導と薬物療法があります。

我々は、食道と胃の境界に下部食道括約筋があり、これが閉まることで胃内容物の逆流を防ぐ機能を有していますが、日常生活においてこの機能を低下させるものがあります。これを防ぐことで括約筋の機能を維持するのが生活指導であり、また、逆流した際に食道粘膜にただれを来し、諸症状を惹起するのは強い胃酸のせいであることから、胃酸を抑えることで被害を最小限におさえるのが薬物療法です。

生活指導

生活面で主に気をつけるべきは、①腹を圧迫しないこと②姿勢(重力を利用して胃酸の逆流を抑える)③食事・嗜好品の3点です。

  • 腹を圧迫しないこと
  • ベルトや帯、コルセットなどで腹を圧迫しない
  • 重い荷物を持たない
  • 前傾姿勢を取らない
  • 肥満の解消
  • 姿勢(重力を利用した胃酸の逆流を防ぐ)
  • 頭を高くして寝る(頭側挙上)
  • 右を下にして寝る(右側臥位):胃の入り口(噴門)を上にして、胃の出口(幽門)を下にする姿勢
  • 食事・嗜好品
  • 早食い、大食い
  • 就寝前の食事
  • 高脂肪食
  • 甘い物などの高浸透圧食
  • チョコレート、コーヒー、炭酸飲料、ミカンなどの柑橘類
  • アルコール・喫煙

生活習慣・食生活の改善を図っても症状がよくならない場合には、薬物療法が必要になります。

薬物療法

胃酸の分泌を抑える薬が基本です。プロトンポンプ阻害薬(PPI)や更に強力に胃酸を抑えるカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)が使われることもあります。また、そのほかに酸を中和したり、粘膜を保護するお薬や、胃の内容物の逆流を抑えるための薬剤(消化管運動改善薬や漢方薬)が一緒に使われることもあります。症状が消失すれば、投薬の中止も可能ですが、中止後に症状が再燃する場合や食道炎の程度が酷かった場合は、食道狭窄やバレット食道、食道腺癌などを引き起こすこともあるため維持療法(投薬の継続)を選択する場合もあります。薬物療法は効果が早いことに加えて食道粘膜のただれも治癒させ、長期の使用においても安全性が確認されています。

患者さん個人ごとに選択は異なりますので、外来にてご相談ください。

 

 

文責 院長 八辻 賢

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