2020年10月02日
コラム
【循環器コラム】 循環器疾患 検査の取り組み
現在日本は高齢者人口の増加に伴い心臓病患者も増加しその治療、予防に日進月歩の進化をしています。しかしながら最先端の治療が出来る施設は限られており、なかなか多くの患者さんがその恩恵に与れないのが現状です。
本日はいくつかの循環器検査法についてご説明いたしたいと思います。
心電図
最も簡単な検査法で皆様もご存知のことと思います。手足と前胸部に10個の電極を付けて得られる四肢誘導と胸部誘導合わせて12点の心臓興奮を波形として表現したのが安静時標準12誘導心電図です。
得られる情報としては不整脈や、虚血性変化(陳旧性と急性期)の有無、心筋への負荷の有無、心機能評価などです。
胸部写真
心臓拡大や大動脈の拡張、石灰化それと肺病変の有無、胸水などの有無の確認に用います。また、心不全の治療効果の確認などにも用います。
四肢血圧
上肢、下肢の血圧を同時に測定して上肢と下肢の血圧の比で下肢動脈の狭窄の有無を調べられると共に、血圧測定時の脈波の立ち上がり速度などで血管の硬さなどを推定することができる簡便な検査法です。
ホルター心電図・イベントレコーダー
不整脈診断に有用な検査です。24時間記録するタイプのホルター心電図は不整脈検出感度は必ずしも高くありませんが、24時間記録することで有益な情報を得ることができます。それに比して最近では検出感度に優れたイベントレコーダー(自覚症状が出たときに患さん自身が手動で記録する)なども用いられてきています。ただもっともポピュラーで治療が必要になる不整脈心房細動に限っていえば、症状が感じられない無症候である場合も約30%あり、イベントレコーダーでは検出できず、ホルター心電図のほうが有効な場合もあり、当院では患者さんに応じて使い分けしています。
心臓超音波(予約制)
心エコーには二種類あります。経胸壁心臓超音波検査(TTE:胸から超音波端子を押し当て、安静時の心臓の形、動き等を観察する検査)と経食道心臓超音波検査(TEE:胃カメラの要領で超音波端子を飲み込んでいただき、体の内側から心臓の様子を観察する検査)ですが、当院では経胸壁超音波検査のみ施行しておりますので、説明は経胸壁超音波検査に関して記します。
①基礎心疾患の有無
左心室(血液を全身に押し出す部屋)の大きさや壁の性状を評価、また大動脈弁、僧帽弁などの開閉の異常の確認で心疾患の有無を確認します。
- 弁膜疾患の有無
- 冠動脈疾患に伴う左室の局所壁運動の異常の有無
- 心筋症に伴う左心室の拡大や壁の菲薄化や肥厚の有無
- 高血圧性変化の有無(左心室の壁の肥大や拡張障害の有無)
- 心膜異常(心嚢液貯留や収縮性心膜炎の有無)
②左心房の大きさにより心房細動の罹患期間の推測と洞調律維持の可能性を評価する。
一般的には左心房径は40mm以下であり60mm以上あると洞調律維治療方法の選択ができます。
当院ではなるべく早期に病気を発見し治療に進めるよう患者さんの検査、検査機器の充実を図っております。循環器の専門医師もおりますので、気になる症状があればお気軽にご相談ください。
文責 副院長 相良 耕一