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2021年01月07日

コラム

【消化器コラム】 肝機能障害(肝炎)① (慢性肝炎、肝硬変)

 

肝機能障害とは、何らかの原因により肝臓が障害を受けて炎症を起こした状態をいいます。

肝臓に炎症を起こした状態であることから、一般に肝炎と呼ばれます。

いろいろな原因で肝障害は起こりますし、放置することで肝硬変や肝臓がん等に進展することもあります。

肝臓は、「沈黙の臓器」と呼ばれているように、よほど悪くならないと自覚症状が出ません。肝機能障害を指摘される多くの方も、自覚症状で気が付くことは少なく、健康診断などの血液検査で指摘された方が殆どです。

肝臓の数値が「要精密検査」となっても、アルコールを控えるから大丈夫、とおっしゃる方もいますが、アルコール以外が原因のことも少なくありません。そして、自覚症状がないことは何の安心材料にもなりません。

 

肝障害を指摘されたら、急性なのか慢性なのか、原因は何なのか、きちんと調べておくことが重要です。現在では原因によっては完治させることもできるようになりました。また、万一肝がんの合併があれば早期に発見し治療することが極めて重要です。

肝臓の機能(3つの働き)

肝臓は右の横隔膜直下に、肋骨に守られるようにして存在し、ヒトの体で最も大きい臓器です。体重の約50分の1を占めるといわれています。

肝臓には、①蛋白の合成、栄養の貯蔵、②有害物質の解毒・分解、③消化液胆汁の合成・分泌、の3つ大きな働きあります。

我々が食事をとると、胃や腸で分解し吸収されたあと、門脈という血管を通して肝臓へ送られます。肝臓に入ると、アルブミンのような体で使用される様々な成分に加工、合成され動脈を通じて全身に送られます。また、糖質はグリコーゲンという形で肝臓に蓄えられ、夜間など必要な時にエネルギー源として血液中に放出されます。薬やアルコールをはじめ、利用されて不要になった老廃物は肝臓で解毒・分解され、一部は胆汁中に排泄されます。

さらに肝臓で合成され、分泌される胆汁は特に脂肪分を分解し吸収する過程で重要や役割を果たす消化液です。肝臓は、こうした栄養の吸収、合成、貯蔵、分解を支える重要な臓器です。

 

肝臓が障害されると・・・

肝炎を来たし、肝機能が低下してくると、上記のような機能が働かなくなり、体に不都合が生じます。蛋白合成が低下すると、浮腫(むくみ)や腹水・胸水が貯まるなどの症状が出現し、薬の分解や老廃物の解毒・分解が低下するとアンモニアをはじめとした有害物質が貯まり意識障害をきたす(肝臓のせいで起こす意識障害=肝性脳症)こともあります。また、胆汁の排泄が滞ると血中に胆汁が逆流し、黄疸が出現します。さらに、肝臓への血液の流れが滞ると肝臓へ血液を送る門脈の圧があがり、他の血管に大量に血液が流れ込むため静脈瘤(食道静脈瘤、胃静脈瘤)を形成し、破れると大出血を起こすこともあります。

こうしたことが起こるのは慢性肝炎が10年~20年という長期にわたり持続し、肝硬変になってからです。しかし、肝硬変にまで進展してしまうともう完治し機能を取り戻すことはできません。治療も症状を緩和するための対症療法が中心となります。

肝臓の治療では、とにかく肝硬変になる前の慢性肝炎の時期に診断し、治療介入を行い、肝硬変にしないことが何よりも重要です。

 

急性肝炎と慢性肝炎、肝硬変

6か月以内でおさまる肝炎を急性肝炎と言い、それ以上にわたって肝臓に炎症を起こす(場合によっては治癒しない)肝炎を慢性肝炎と言います。急性肝炎は、一過性の炎症で完治するものもあれば、高度な炎症は収まるものの軽度の炎症が持続(=慢性化)し、慢性肝炎に移行するものもあります。

 

 

肝臓はダメージを受けても、再生力が強いため、軽度の炎症であれば持続してもほぼ症状が出ません。しかし、それでも10年、20年と炎症が続けば肝臓は傷んできます。壊れ続けた部分を補うように線維質が蓄積し、やがて肝臓の中に線維の壁ができてきます。肝細胞は繊維の壁の中で再生して増えるため、最終的には壁に囲まれた結節を形成します。こうして肝臓がたくさんの結節の集まりに変化し、硬くなったものが肝硬変です。

結節の中である程度再生して増えると、壁に邪魔されそれ以上は増えることができなくなるため、最終的に肝臓は小さくなります。こうなると、十分な血液が肝臓に流れられなくなり、肝機能が低下し、様々な症状が出るようになります。体はなんとかやりくりして機能を維持しようと試みますが、ついに破綻し「黄疸」「腹水」「肝性脳症」が出現するといよいよ肝硬変の末期、「非代償性肝硬変」と呼ばれます。

また、肝硬変は高率に肝臓がんを合併します。癌の合併は絶えず念頭においてfollowしていくことが重要です。

 

肝炎の診断

まず、問診で詳細に話を伺うことが重要です。

問診で得られる情報だけでもかなり原因や現在の肝機能の状況を推測することが可能です。そして、問診で得た情報をもとに、必要な採血検査や腹部超音波検査などの画像診断を行い、原因の追究と現在の肝臓の状態を詳細に把握し、適切な治療へとつなげていきます。

特に、急性肝炎の場合は重症化、劇症化しないかが重要で、慢性肝炎の場合は肝硬変になっていないか、また慢性肝炎であればどのステージにあるのか、肝硬変になっていないのか、肝がんの合併はないかを見極めることが重要です。原因によっては適切な治療で完治することも期待できます。

 

肝炎の原因

原因により、治療法が大きく異なるのはもとより、急性肝炎で終わるか慢性化するのかもおよそ推測できます。そうした意味でも原因を追究することは非常に重要です。

アルコール性肝障害、B型肝炎、C型肝炎などが有名ですが、そのほかにも非常に多くの疾患が知られています。

ここについては別項でもう少し詳しく触れたいと思います。

 

とにかく早期に診断、治療の開始を!

最近では、健康診断などの血液検査で肝機能障害を指摘される人が多くなっています。

肝臓は、「沈黙の臓器」と呼ばれているように、よほど悪くならないと自覚症状が出ませんし、出たときには肝硬変や肝癌を発症しており完治は望めない状況であることも少なくありません。このことからも自覚症状がないことはなんの安心材料にもなりません。

せっかく早期に発見できたのであれば、その機会を生かして適切に治療につなげていくことが非常に重要です。

 

当院では、消化器病学会専門医、肝臓学会専門医が外来を行っております。気になることがあればお気軽に受診、相談下さい。

文責 院長 八辻 賢

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